地域と時代
基本的には中近世イギリス史、あるいは中世史で卒業論文を書くことを考えている学生を対象とするゼミです。ただし近代あるいはアメリカ史などからテーマを選ぶことも可能です。いずれのテーマでも少なくとも英語文献の利用が必須です。これまでの卒論のテーマは以下で紹介しますが、現在の研究のトレンドも反映して多様です。もし中世史で大学院進学を考えている学生はラテン語を(2年から3年生で別途履修してもらってそれを)少しでも使って卒論を書くのも歓迎です。
研究会の活動
研究会では、春学期に文献調査についての基礎を学び、各自が興味あるトピックを選び、教員と相談しながら関係する文献のリストを作成し、文献を読み、発表してもらいながら、徐々にテーマを絞っていきます。それと同時に、文献の講読をしていきながら、知識や歴史学的な問題をゼミ全体で共有しながら考えていきます。3年生の終わりまでに「卒論準備レポート」(ゼミ論)を作成し、それを踏み台にして、4年生で卒業論文を作成してもらいます。夏の終わりにはゼミ合宿も行う予定です。
教員の研究
ヨーロッパでは、グーテンベルクが15世紀半ばに活版印刷を開始したことで、マス・メディア=大量言説普及システムが出現したと思われがちです。しかし、それ以前の中世のキリスト教、とくに托鉢修道会による説教がそういうマス・メディア的な性質をもっていたのです。そういう新しい視点からみえてくる中世の世界を、ラテン語と中世英語で書かれた写本史料に基づいて実証的に研究し、研究成果を英語と日本語で発表してきました。研究の一端については、2014年に『知のミクロコスモス』という論文集で私の論文が出版されたときに行われたインタビューがYouTube上にあるので、これを聞くのが手っ取り早いかもしれません。https://youtu.be/uBjnEJbsdUw?t=143
教員の研究業績一覧は以下を参照してください。https://researchmap.jp/yuichi.akae
ちなみに、2年生の必修授業である「原典講読」の授業で以前講読した本が出版されました。ジョン・H.アーノルド著『中世史とは何か』図師宣忠・赤江雄一訳、岩波書店、2022年。https://www.iwanami.co.jp/book/b616715.html
卒業論文(2023年3月卒業生)のテーマ *()内は史料
· 「感情から見た 14 世紀ヨーロッパの黒死病——イングランドを中心に」(14世紀の年代記史料)
· 「ライムンドゥス・ルルスの合理性——「異邦人」の存在から考える」(13-14世紀の神学者ライムンドゥス・ル
ルスによる宗教間対話を題材とした著作)
· 「『マージェリー・ケンプの書』が語る14世紀の女性神秘家像——同時代の神秘家と比較して——」(『マージェ
リー・ケンプの書』)
· 「イングランド宗教改革期のデヴォン州モーバス教区における聖職者および教区民の宗教的主体性」(16世紀のモ
ーバス教区委員記録)
· 「Joseph Strutt の好古家としての活動における目的とその達成の分析」(18世紀の中世主義者の研究)(ストラ
ットの諸著作)
なお、現在指導中の修士論文のテーマは18世紀イングランドにおける舞踊史、5世紀ローマ史、7~8世紀ビザンツ史、12世紀ビザンツ‐ヴェネツィア史です。