地域と時代

山道の専門はスペインの中でも独自の歴史・文化・言語を持つカタルーニャの近世・近代史です。スペイン史を勉強したい人は大歓迎、それ以外ではなるべく地中海ヨーロッパやスペインの旧海外領土のことをやりたい人に来てもらうことを希望します(ただしスペイン史で卒論を書く場合スペイン語文献を読むことが必須となりますので覚悟してください)。とは言え、以下のように、ゼミ生の研究テーマや地域は、毎年バラエティに富んでいます。地域、研究の手法、ゼミの進め方など、どこかに興味の接点を感じたら、まずは話を聞きにきてみてください。時代としては近世から現代までが対象となりますが、スペイン語圏の歴史をテーマとする場合にはそれよりも古い時代も対応します。

 

研究テーマ

山道の現在の研究テーマは、近代揺籃期(18世紀後半から19世紀初め)のバルセローナ市における手工業者、特に絹産業の7つのギルドに所属した親方・職人とその家族です。彼らの「遺言書」「死後財産目録」「結婚契約書」などを史料として、労働の組織、職業伝承と家族、労働とジェンダー、生活水準や消費文化について調べています。「ギルド」というと古くさい響きがあるかもしれませんが、その中に近代を先取りしたような生産の形や技術革新、労働文化、消費や生活に関わる行動や心性の変化が見られることに注目しています。

ゼミで扱うテーマはより広く、その年に集まってくるゼミ生の興味によって変わります。卒論のテーマとしてこれまで多くのゼミ生が選んできた分野としては、ジェンダー、家族、娯楽やスポーツ、服飾、建築や都市計画、食文化などがあげられます。とにかく自分の興味が感じられる好きなテーマを選ぶというのがゼミのモットーですので、バラエティに飛んだテーマについて共に学んでいくことになります。

 

活動内容

ゼミは45限の2時限連続で開き、基本的に4限に3年生の報告、5限に4年生の報告を行います。3年春学期には歴史の方法論を理解するための日本語文献の輪読をし、3年秋学期以降は各自の卒論テーマについての報告と全員による質疑応答で進めます。参考までに、2020年度春学期の輪読では、リン・ハント『なぜ歴史を学ぶのか』(岩波書店、2019年)、長谷川貴彦編『エゴ・ドキュメントの歴史学』(岩波書店、2020年)を読みました。

ゼミコンパ、夏合宿などは現在休止中ですが、コロナ禍が収まったら再開します。

 

☆現ゼミ生が取り組んでいる卒論のテーマ(2021年度4年生、休学・留学中の者を除く)

18世紀マドリードにおけるパンの製造と供給

・モデルニスモのパトロン、クラウディオ・ロペス・ブル(18531925)の投資について

1617世紀のペルー副王領におけるインディオの生活と労働

・ブラジル第一共和政時代(18891930)におけるミルクコーヒーの政治とコーヒー産業

・ヴィクトリア朝期ロンドンの住宅関連法とオクタヴィア・ヒルについて

・ジョージ・オーウェルのBBC期の活動:反帝国主義的思想とインドに対する見方

1960年代英国の労働者階級の生活とロック・ミュージックの発展

19世紀イギリスのワイン産業:業界団体や会社の発展を見る

・第1次世界大戦から戦間期のベルギーの歴史と記憶の継承について:ディナンの要塞展示や歴史教科書から

 

☆サブゼミ(希望者、参加・見学・脱落自由)

スペイン語・カタルーニャ語・ポルトガル語の文献を積極的に読んでいこうという学生対象に、大学院生と合同でサブゼミ(オンライン)が開かれています。こちらは正規の授業ではありませんので、ゼミ生以外の参加も歓迎します。

・現在(2021年夏)購読中の文献

Paul Preston, Un pueblo traicionado. España de 1874 a nuestros días, Penguin Random House, 2019; Les transformacions agràries a la Catalunya del segle XVIII. 40 anys després de la tesi de Pierre Vilar (Estudis d’història agrària, núm.20, 2007); Rose Duroux, Franceses que emigraron a España. Auverneses en la Castilla del siglo XIX, UNED, 2019; Borja de Riquer, Escolta, Espanya: la cuestión catalana en la época liberal, Marcial Pons, 2001.など

・参加している大学院生の研究テーマ

 

18世紀後半バスクの民衆暴動、20世紀スペインの写真家ホセ・オルティス・エチャグエ、18世紀ポルトのワイン産業、17世紀後半から18世紀スペイン商業におけるフランス人、カタルーニャ主義の政治思想。